国土交通省発表のガイドラインについて

自動車整備、板金塗装業界の皆様に向けて令和7年3月に指針として発表された国土交通省からの施策である『車体整備事業者による事故車修理の適切な価格交渉の促進のための施策』について、修理業界のベテラン社長でも施策の意図と違う解釈をされている方がいらっしゃいます。
ここでは当該ガイドラインが何を言わんとしているのか、車体整備を営んでいる皆さんが何をすべきなのかを詳しく解説していきますので、しっかりと理解して保険会社に対しての交渉力を強化していきましょう。
私は『真に適正な価格』を信念としています。失われつつある貴重な技術を守り、自らの意思において適正な価格で販売できる世の中を目指して一緒に進んでいきましょう。
※BM問題に端を発して令和6年3月に発表された『車体整備の消費者に対する透明性確保に向けたガイドライン』については別の記事で解説しています。
※一部、私の主観的な解釈が入っていますので国交省のガイドラインと併せてよくお読みいただき、皆様で個別に解釈とご理解を頂けますと幸いです。

『車体整備業者による適切な価格交渉を促進するための指針』
ここでは車体整備業界が抱える課題のひとつ『人材確保』について、この課題を解決するために魅力的な業界を構築する必要性から、労務費の転嫁率が低い受注者の割合が高い業種ワースト1位、低水準と言われている賃金の上昇によって魅力度の向上と、賃上げのための原資の確保を進めるべく修理業者にとって何が必要なのかを指針としてまとめてあります。
車体整備業者が取り組むべき事項として大きく分けて9項目が下記の通りです。
1.自社の責任と考えによる見積もりの作成
2.人件費の上昇も考慮した工賃単価の提案
3.作業時間の実態を踏まえた価格請求
4.見積書、作業記録簿等の標準様式の使用
5.代車費用の支払いに関する考え方の理解
6.透明性・公平性が疑われないような請求・説明
7.損害保険会社との交渉における留意点
8.協定に時間を要する場合には依頼者に判断を仰ぐ
9.依頼者に対する適切な情報提供
一つずつ掘り下げて見ていきましょう。

1.自社の責任と考えによる見積もりの作成
・見積もりの作成は、損害保険会社に委ねず、自社の責任で行うこと

ここでは見積もり作成について述べています。近年では少数派になりましたが保険会社へ見積もりを作成依頼する修理業者がまだ存在します。これにはいくつか理由があるとは思いますが、単純に面倒だからといった理由が主ではないでしょうか。見積もりソフトを導入していないという理由や、そもそも見積もりが作成できない(わからない)という方は少数派になりつつある印象です。一番は「自分で時間をかけて見積もりしても保険会社が認めないなら最初から保険会社が認める範囲で見積もりを作って貰えばいい」という諦めにも似た理由が多いように感じます。これは修理工場の見積もりに対する知識不足や、仮に妥当な請求であっても妥当性の証明が不足していることによって保険会社が支払いたくても支払えない状態になっている事が主な原因と言えます。社会通念上妥当とされる見積もり内容にするには客観的な根拠が無ければ保険会社のみならず、今の時代ユーザーからも認めてもらえません。勿論、訴訟となった際に裁判所等の法的な機関からも認められないため、いくら大変だったからと言葉で訴えてもどうしようもないのです。
車体整備において工賃を算出する上で一般的に使用されている『自研センター指数』ですが、結構毛嫌いされている修理業者の方が多いのではないでしょうか。これは過去に保険会社が自研センター指数を盾にして交渉を行い、そんな交渉に押さえつけられてきた歴史がそうさせているのは明らかです。
しかし、法的にも客観的に認められる根拠となる指数は多くありませんし、基本的に多くの修理工場や保険会社が使用するのは自研センター指数がベースとなります。ですから自研センター指数を『準用』した請求をすることで、しっかりとした根拠立てができるようになることが重要です。これは別の記事で詳しく解説しますので是非ご覧ください。
まずは見積もりの作成について、見積もりの作成のみならず自社の行った修理の請求に関して、しっかりとした客観的根拠を持って妥当性を説明できるようになりましょうという内容です。

2.人件費等の上昇も考慮した工賃単価の提案
・工賃単価は、消費者物価指数のみならず人件費の上昇も考慮して提案すること。

自社のレートを明確にして、正当な請求をしていきましょうという趣旨の項目です。工賃単価については過去数十年、ほとんど変わらず推移してきました。保険会社が独自の理論で組み立てた数値が現場の実態と乖離しているのに、大手ディーラーが年始にレートを握ってしまうため、車体整備業者が口を挟むことが難しく、これを変えようとする大きな動きがありませんでした。
しかし、昨年度からこれが大きく変化してきています。ディーラーに関しても保険会社とレートの交渉において年始に価格を握らないところが大半となってきました。実は私も前々から車体整備のレートに関しては明らかに安いと感じており、修理工賃に関する全体的な市場性が上がっていかなければ車体整備業界に未来はないとの危機感から知り合いの国産系ディーラーの担当者には、年始に保険会社と単価協定をしないようにアドバイスしたり、車体整備業者には全体的な市場性の向上を目指してほしいという想いを伝え、真に適正な修理費であれば自分の会社から言われている事でも無視して工場の請求を通してきました。正直自分の首を絞めるだけなのであまり利口なやり方ではありませんが、車体整備業者、保険会社だけでなく自動車業界全体の地位向上のために必要なプロセスだと信じて行動してきましたが、時代とマッチしてようやく変化が起き始めています。
現在の日本は失われた30年というワードが飛び交っていますね。政治によって国民が搾取され続けたが為に日本国民が貧困化しています。車体整備業界に関しても同じことが言えます。今年が最大のチャンスであり、2025年が変革の年となるはずです。
しかし、思い通りのレートを請求するには車体整備業者にも工賃単価(自社レバレート)を提示できるだけの根拠とそれを説明できる知識が必要です。ですから会計士さんや税理士さんを交えて自社レートを算出し、ハッキリと説明できるようにしておくことが重要です。
もう正直に言いますが、根拠のある自社レバレートが社会通念に照らして市場と大きく乖離していなければ保険会社はそれを否定することはできません。社会通念とは「社会一般に広く一般的に行き渡っている常識や見解」ですから全体的な相場の底上げが重要なのです。相場が上がらなければ私たちが理想とする真に適正な工賃に辿り着きません。
更に言うと算出するに至る資料の提示が出来れば一番いいです。これは会社を運営する上で大変重要なポイントになるのは経営者の皆様ならご理解の上とは思います、それでも過去10数年、A4用紙一枚以上の根拠を提示してきた会社は私の経験上ありません。
「割に合わない」「物価高でやっていけない」「材料が高騰している」といったような『理由』で単価を上げることになりましたと、それは言われなくてもわかってます。だけどそう言われても払えないんです。なぜなら根拠となる資料がないから。根拠がないと払えないのはなぜ?それは市場が安いままだから(社会通念上高いと言わざるを得ないから)。
なら根拠のある資料を出しましょう。市場性が上がるまでそれをみんなで続けていきましょう。正当な請求ができるように学びましょう。
簡易的なレート計算はインターネット上でできます。会計士が付いていなければまずはそこから始めましょう。
保険会社が認める自社レバレートの算出方法と根拠資料については別記事で掲載予定です。是非そちらもご覧ください。

3.作業時間の実態を踏まえた価格請求
・車両の状態が「指数」(標準的な作業時間)の前提と異なるなど、特殊事情がある場合は個別交渉すること。

指数では割に合わないといった多くの声を受けてできた項目ですね。指数ではある程度の腐食や経年劣化による作業性の低下を盛り込んで作成しているという前提条件があることから、なかなかこれを覆す根拠立てをすることが困難です。そこで当該ガイドラインでは「作業者の経験・知識に関わらず作業時間が延びることがある」場合には保険会社にその旨を丁寧に説明し実際に要した作業時間を『客観的』に示して当該時間に応じた価格を請求することとしています。また、指数に含まれるとされる付随作業であっても、時間を要す場合は指数が妥当か検討すること、明らかに指数内では作業が困難な場合は国土交通省設置窓口へ情報提供を呼びかけています。
これは指数の妥当性見直しや、適正価格の請求に寄与する重要なプロセスです。
ここでポイントとなるのは作業時間を『客観的』に証明する必要性が示唆されていることです。
説明責任という観点になりますが、以下が特に重要です。
・作業手順の理解・・・通常の手順(メーカー作業書手順)の熟知と実作業の差分を理解すること
・写真撮影による証明・・・作業内容、難易度がわかるように証拠として写真を撮影すること
・口頭による説明・・・写真をもとに実作業が指数と比較してどのような難易度であったか説明すること
透明性や説明責任が求められている現代において、市場価格(指数や工数)より高い価格を請求するには客観的にその金額が妥当であるか証明する必要があります。面倒だからといって避けて通ることはできません。ユーザーへの説明責任も果たせると考えればこの手順をスタンダードにして損はないと思います。後のトラブルやクレームに対しても対応できますし、保険会社への説明も容易になります。ただし、ここまでやっても理解できないアジャスターがいた場合は即刻国土交通省に情報提供しましょう。

4.見積書、作業記録簿等の標準様式の使用
・修理内容、費用を明確化し、透明性をもって請求すること
-産業廃棄物処理費などにかかった費用を無かったことにしない
-不合理な総額割引は見積もりの妥当性を失わせる恐れがある
※見積書、作業記録簿等の標準様式については国土交通省HPに掲載されている別添2→の中の別紙1、2に標準様式とされる見積書と車体整備記録簿が添付されていますのでそちらをご覧ください。

ここでは、行った作業に対して書式を持ってその内容を記録、請求をする必要性を謳っています。『工賃一式』や『部品代一式』などの項目ではなく、例えばフロントバンパ交換作業であれば最低でも
フロントバンパ  取替(工賃)  〇〇円
 フロントバンパ  (部品)   〇〇円
 クリップ     (部品)   〇〇円
 サイドサポート  (部品)   〇〇円
システム診断    (点検)   〇〇円
運転支援システム 調整(工賃)  〇〇円
廃棄物処理費用  (産廃)    〇〇円 
                               この程度までは書くことになるでしょう。
省略しようと思えば2行で済む見積もりですが透明性もなく説明責任も果たせないということから、やったことはしっかりと記録、計上して請求に繋げていくという趣旨です。
流石に工賃一式や部品一式といった項目を現代で使用している修理工場はごく少数派ですのでこれは極端な例ですが、一般的に請求から漏れている項目について漏れなく請求していきましょうという内容になります。
ここで問題となるのが通常自社レバレート計算の際に『経費』として計上している項目については重複した請求になってしまう恐れがあります。
例えば上記に挙げたような『産業廃棄物処分費用』、また『システム診断費用』の中に診断機自体の償却費が含まれている場合などです。
産廃費用においては一般的に修理した車一台あたりの金額を算出する事が困難です。それはご存知の通り処理業者に廃棄物を処理依頼するときにはコンテナ1杯分といったようにまとめて依頼することになるためです。
ですから工場経費としてレート計算の際に計上しているという実態があります。そうなれば当然レートに含んで請求しているわけですから個別に請求することは重複した請求ということになります。
レバレート計算の際に工場経費として扱わず個別請求をしていく方針の場合は処理費用の相場から実際修理した車から発生した産業廃棄物のおおよその重量と処理相場を把握し、適正な価格を算出するということになります。
保険会社が産業廃棄物処理費用を頑ななまでに支払いたくないというスタンスを取るかといえば指数対応単価を策定する際に環境費扱いで産廃費用を単価に盛り込んで計算しているからです。また、修理工場各社がどのようにレート計算しているかを完全に把握する事が難しいためでもあります。経営を考えた修理業者の社長さんは自社レバレートを会計士と共に算出していますが、そのように自社レート計算を行なっている業者は数%しかないということも問題の一つです。全ての修理業者が自社レートを計算し、レートに内包されている費用を把握し、請求すべき金額を把握し説明できるのであればアジャスターが交渉する事は相場との明らかな乖離を除いて殆どなくなります。特に指数対応単価が問題視されレバレートが尊重され始めた昨今、適正価格の実現に向けた取り掛かりとしてこの取り組みを進めていきましょう。

5.代車費用の支払いに関する考え方の理解
・対物賠償責任保険における代車費用の支払いの考え方を理解すること
(無過失でなくても過失割合に応じて代車費用が支払われる約款が多い等)

修理業者の中にはいわゆる「0:100」の被害事故でなければ代車費用は支払われないという誤解をされているかたが多くいらっしゃいます。中には保険会社の社員でさえ誤解して運用しているケースも過去にはありました。
本件解説するにあたって注意しなければならないのは、保険会社毎の約款によってこの解釈は異なるため請求者と支払者の関係である修理依頼者(保険契約者または被害者)から事故を担当する保険会社へ問い合わせしてもらうことが大切です。あくまでも請求者が事故との相当因果関係が認められる代車費用について賠償の範囲として加害側(保険会社)へ請求した場合に、貸出を行った修理工場に対して便宜的に損害賠償金をお支払いしているという構図であり、本来は修理工場が保険会社に請求するといった関係性ではありません。
保険会社のスタンスも代車費用というわけではなく代車を用意してくれた工場に対して「謝礼金をお支払いする」といった形をとっています。そもそも工場代車とは修理期間中に無償で貸し出す『代わりの車』です。自動車貸渡業の認可がなく有償で貸し出すこと自体が違法ですから保険会社としては素直に日額で支払う事は違法行為を容認したことになります。そして修理業者にとっても大変なリスクがあり、請求にあたってはかなりグレーな部分と言えます。
自家用自動車有償貸渡業の認可を受けている工場であれば問題ないことですが、認可のない修理業者の方たちは保険会社に対して間違った権利を主張することは控えるようにしましょう。
さて、請求するにあたり前提となる情報をお伝えしたところで本題に移ります。責任割合について皆さんはどこまで理解されているでしょうか。「言われなくてもわかるよ」と仰る業者様も多いかと思いますが深い部分については別記事で詳しく解説するとして、ここでは基本かつ具体的なケースに触れていきます。
・責任割合「10:90」の場合
登場人物AとBに分けてそれぞれに支払われる賠償額を考えていきましょう。
ここでは皆さんのお客様はAさんとします。
Aさん 修理費100万円(修理日数14日で費用2万円) 責任割合10% 総額102万円
Bさん 修理費100万円(修理日数14日で費用2万円) 責任割合90% 総額102万円
こんな事はあり得ませんが分かりやすく同じ金額同じ修理期間と仮定します。

・AさんはBさんから自分の修理費の90%である90万円と代車費用の90%である1.8万円の合計918,000円を受け取る権利があります。加えてBさんの修理費の10%である10万円と代車費用の10%である2千円の計102,000円を支払う義務があります。受取金額から支払額を差し引くと816,000円を受け取れる事となります。
・BさんはAさんから自分の修理費の10%である10万円と代車費用の10%である2千円の合計102,000円を受け取る権利があります。加えてAさんの修理費の90%である90万円と代車費用の90%である1.8万円の計918,000円を支払う義務があります。受取金額から支払額を差し引くと816,000円を支払うことになります。

AさんとBさんの受取りと支払いの金額が一致しました。最終的にはBさんがAさんに816,000円を支払って解決となり、これが基本的な過失相殺の原理です。
ここで重要なのは双方に責任割合分の費用を受け取る権利が発生しているという点です。
つまりAさんに発生した代車費用20,000円の内、受け取る権利のある18,000円を修理工場の皆さんは相手(保険会社)から受け取る事ができます。正確にいうとAさんが18,000円の賠償を受け、修理工場へ支払う事ができるという事です。残りの2,000円はAさんが支払うか、サービスとするかは修理業者とAさんの問題ですから自由ですが基本的な考え方は以上となります。
今まで責任が発生すると貰えないという誤解をされていた方からすると相当な金額差になりますね。
責任割合の基本を理解し自社のお客さまが受け取れる代車費用をしっかり貰えるようにしましょう。ただし、注意したいのは保険会社同士で交渉している場合、示談交渉の条件に「代車費用について請求しない代わりに責任割合を1割譲歩する」という交渉をしているケースがあるので無理に請求を強行すると自社のお客様に不利な条件が発生する可能性があります。
とは言えまずは保険会社へ「責任割合分の代車費用を請求したい」と申し伝えるようにしましょう。本当はお客様から要求を上げてもらう方がいいですが、自社のお客様には頼みにくいですよね。しっかりと事故の特性や示談の状況を理解してまずは請求する意思を示しましょう。

6.透明性・公平性が疑われないような請求・説明
・価格の透明性・公平性を説明できるように、作業と請求を行うこと
(恣意的に理由なく保険修理と、それ以外で価格を異ならせない等)

ここでは端的にいうと、「保険修理と一般修理で理由なく価格の差があってはならない」ということが謳われています。修理業者でいた頃もアジャスターになってからも保険修理だからという理由で金額を自社で考える小売価格以上にしているという声を多く耳にしており、今に至るまでそんな実状がありました。
適正な価格でより良いサービスをユーザーへ提供するのが企業としての規範であると私は考えますが、板金塗装業界においては不幸な事故に見舞われたお客様へは情も働き、できるだけ負担を少なくしてあげたいという意志で、安く良い物を提供したいという想いで、自社の利益を度外視する情に厚い社長様も存在します。一方で物を言いやすい保険会社に対しては市場価格またはそれ以上の請求をするという二面性が価格の透明性を損なう要因となっています。これは板金塗装や修理業界の信頼性を欠く事となり悪循環です。
保険に関して正しい理解があれば『値引き』という手段を使わなくともお客様にとっても修理業者にとっても有益な方法が見えてきます。
ここで謳われているのはお客様に対してだけではありません。「保険会社は依頼者の側に立って価格交渉を行うだけでなく、適正な損害査定及びそれに応じた保険金支払額の算定を行う社会的責任を担っている」とあります。保険会社側は保険のシステムを成り立たせるために適正な料金を算定する必要があり、社会の成り立ちとしては一理あります。
修理業者にとってネックとなる文言がこの後に続きます。「損害保険会社から価格の透明性に関する指摘を受けた場合はそれぞれの指摘に対して真摯かつ誠実に説明することが求められる」と。これは保険会社にとって都合の良い文言ですね。工賃単価、作業内容、工数設定、高額となった理由等々、保険会社に説明する責任が発生したという事となり、「ウチはこの金額だから」とか、「今までずっとこうしてきた」などといった説明では成り立たなくなってしまったのです。そもそもそのような説明では本来成り立たないものを今までは強引に通す事ができた時代でもありましたがここ数年で大きく変わってきています。つまりはお客さまや保険会社にとって納得感のある請求を透明性を持って行っていく事が重要という事ですが、そのためには様々な知識を得る必要がありますので自信がないという修理業者様はこの機会に一緒に学んでいきましょう。

7.損害保険会社との交渉における留意点
・損害保険会社と見解が相違する場合は丁寧に説明し、損保会社に対しても丁寧な説明を求め、双方が建設的に対話すること
・保険の仕組みや賠償の考え方について説明を受け、理解すること
・「アジャスターや担当拠点には決定権がない」「地域相場で決まっている」など、不合理な説明で交渉が進まない場合には、必要に応じて国交省の窓口へ情報提供すること。

ここで重要なのは見解の相違によって交渉が進まない場合どのようにしたら良いかという点です。そもそも丁寧な説明をお互いに励行し、建設的な対話を行なっていれば交渉が進まないなどということはそうそう起きません。先ずは丁寧に交渉をすることです。
交渉において問題となるのは大きく分けて2つ『金額』による見解の相違と『保険の範囲』による見解の相違です。
金額について一番問題となるのは指数対応単価とレバレートの見解相違です。これは近年物価上昇や賃金上昇に伴い単価の市場相場も上がってきている良い傾向と感じています。市場相場が上がれば保険会社も修理業者の主張を飲まざるを得ません(社会通念上不当に高額とは言えない)のでこの流れは切らずに続けていきたいですし、世の中の流れが良い傾向であると捉えています。
金額については丁寧に対話すれば解決できるとして、保険の範囲についてが見解が相違しやすいところです。仮に全く同じ損傷の車があったとして、車両保険と対物賠償保険では支払い範囲が異なってきます。本来現状復旧、原状回復を基本としているため同じであるべきですが、約款によって支払可否が異なる部分や示談特性上支払う部分等、様々な理由が存在します。わかりやすい例で言うと『ステッカー貼り替え』です。ステッカーは社名等目的を持ったものでなければ装飾品に該当するため車両保険では支払対象外ですが、対物賠償においては原状回復の観点から支払対象となります。保険の範囲はケースバイケースですし損害保険を取り扱ってみないとわからないことですので信頼のできるアジャスターに相談することをお勧めします。示談代行経験がある中堅アジャスターが一番相談しやすいと思いますので探してみてください。管理者クラスになると様々なしがらみもあって言いたいことも言えない立場にもなりますし、若手は理解が足りない部分がありますのでやはり中堅クラスが良いですね。もちろん私でも大丈夫です。

8.協定に時間を要する場合には依頼者に判断を仰ぐ
・1週間を超えて見解が相違する場合、依頼者に対して損害保険会社が提示する保険金の範囲では修理できない旨説明すること

9.依頼者に対する適切な情報提供
・求められれば依頼者に対して作業内容と見積もりを丁寧に説明する事(保険金による修理は「現状復旧」であることなど)

まだまだお伝えしたいことが沢山ありますし、書き足りないです。この業界が健全に発展できるように尽力して参る所存です。別記事も早急に書いてアップしますのでこのページにリンクを追加していきます。ブックマークやお気に入りに入れて追記や更新をチェックしていただけると幸いです。