保険会社との交渉

今後は修理工場目線とアジャスター目線を両方経験した私だからこそ辿りついた交渉のノウハウをご紹介していきたいと考えています。

まず初めに、保険会社との交渉において大切な事は、なぜ修理工場が保険会社と金額の交渉をしなければならないかということを理解している事が重要です。

大まかに分けて2つのケースでお話しします。

1つ目は自損事故、単独事故と言われている事故形態で、被害者や加害者といった関係性がなく過失が発生しないケースです。

2つ目は車対車の事故であり加害者と被害者の関係性がありいわゆる過失が発生するケースです。

1つ目は納得できると思います。自社のお客様が自分で自分の車を壊して自分の保険を使用して自分の車を直すわけですから。

難しいのは2つ目です。例えば過失が100:0と決まった案件の被害者(つまり過失が0の方)がお客様であった場合、加害者(過失が100の方)の契約している保険会社Aが損害確認から修理費の協定を行います(例外はありますので一般的なケースとして例とします)。

加害者の保険会社Aと被害者の修理工場との交渉となるわけです。

それぞれの立場をまとめると次のようになります

⑴加害者→被害者への賠償金支払いを保険会社Aへ一任

⑵被害者→加害者への賠償請求額の決定を修理工場へ一任

という事になります。

ここで重要な事は⑵です。よくお聞きするのは「ウチは修理した代金を払って貰えればいい」とか「ウチは修理屋だから言われたことをやるだけ」といった声です。無責任ですね。

ところが⑵にもある通り、工場は加害者への賠償請求額の決定を任されているわけです。

本来であれば被害者が加害者への請求を行うのですが⑴の通り保険会社が一任されています。また、自動車という専門的な修理金額の請求ができないこと、修理代金を一旦加害者を通して保険会社に請求すると、修理費の交渉において例えば修理項目が重複していて減額が適当であった場合、社会通念上明らかに高額な請求であった場合などでは被害者に自己負担が発生します。その他様々な理由から便宜上ですが保険会社と修理工場で直接交渉をするわけです。

そして損害の立証は請求者に義務が生じます。つまり、一任されている修理工場にその義務が生じるわけです。例えば工場が損傷写真を撮り忘れ、損害の立証が出来ず修理費を支払ってもらえない場合はどうなるでしょうか。

被害者であるお客様に支払わせるなんてできませんよね。

いかがでしょうか?ご存知の方も多いと思いますが未だに無責任な事を言う工場は存在します。

事故というマイナスなイベントにおいて保険会社とトラブルになって時間ばかりがかかってしまうことで一番辛い思いをするのは車の所有者、つまり自動車屋さんのお客様です。

まずは今回取り上げた保険会社と修理工場の立ち位置を理解し、対等な立場で交渉に臨むということが大切です。

それがひいてはお客様のためになるということなのですから。

ではまた次回。