自動車保険で支払われるお金の話

みなさんこんにちはkazuです。今回は保険金について少し突っ込んだお話をします。
というのも先日身内が事故を起こしまして当事者の気持ちがよくわかったので同じような状況の方々には役に立つ情報かと思いました。事故は不幸なことです。そんな不幸に見舞われたときに保険金支払額を最適にに支払ってもらえるようにしたいですよね。
いくつか例を出してお話ししていきますので最後までお付き合いください。

因みに身内の事故は車対車で、身内の車は全損になりました。

◇過失割合ケーススタディ
車両保険を付保していない方で車を修理する場合、双方に過失が発生するケースの場合、相手の車の修理にかかる費用の賠償は保険から全額(割合分)支払いをしますが、自分の車の修理費は自分の過失分だけ自己負担することとなります。
※過失とは非がある割合を100%とした場合に何%自分に非があるかを表す数値です。
例えば自分の車の300,000円の修理費用に対し自分の過失割合が50:50の場合、150,000円を自己負担します。10:90の場合でも1割にあたる30,000円を自己負担しなければなりません。
修理費用が大きい場合は過失割合の1割分が大きな争点になります。
逆に修理費用が少額であっても保険使用すると保険料が上がってしまうためできるだけ過失割合を少なくして保険を使用せず、支払う金額を抑えたいと言う心理となるため同じく争点となります。

◇保険金と損害賠償金
自動車保険において支払われるお金は保険金または賠償金であると言う点です。
通常、車が故障して修理に出した場合に修理するためにかかった費用を支払いますよね。例えばバッテリーが上がってしまったので業者に依頼して出張してもらい交換してもらった場合、出張料5,000円、バッテリー部品代10,000円、工賃3,000円で合計18,000円+税を支払う。みたいな感じです。実際に行われたサービスに対して対価を支払うのが売り手と買い手の関係ですから当然です。

しかし自動車の修理費に関しては保険金または賠償金であり、損害に対する支払いですので修理をしなくても修理費は支払われます。
※その支払い金額を適正に算出するのもアジャスターの仕事です。

◇過失割合ケーススタディ②
例えば、出会い頭で事故を起こしたAさんとBさんがいたとします。
Aさんを自分とした場合過失割合はAさんが30%、Bさんが70%で決定した場合
Aさんの車の修理費用は300,000円。車両保険は無し。
Bさんの車の修理費用は輸入車で高額のため1,000,000円。車両保険が有り。

この場合単純にAさんとBさんの支払う額を計算すると、
□Aさんは修理費用300,000円のうち70%の210,000円をBさんの保険会社から受け取り、残りの90,000円を自己負担します。(+等級ダウンの保険料差額)
□Bさんは修理費用1,000,000円のうち30%の300,000円をAさんの保険会社から受け取り、残りの700,000円をBさん自身の車両保険から受け取ります。(+等級ダウンの保険料差額)

いかがでしょうか。過失割合の大きなBさんは保険料差額のみの負担で済みますが過失割合の少ないAさんは自分にも非はあるにせよBさんの方が悪い事故なのに保険料差額に加えて90,000円も自己負担しなければなりません。
車両保険を付保していないから仕方ないといえばそれまでですが実際車両保険って結構お高いので私も妻の車にしか付保していません。

みなさん自分がAさんだったとしたら納得いきますか?車両保険ケチったから仕方ない?そうも考えられますが90,000円は大きいですよね。
そんなAさんの自己負担を減らす方法があります。
それは損害認定による支払いです。

先ほどもお話しした通り保険金または賠償金は損害に対しての支払いであるため通常の売り買いとは異なります。
よって保険会社に損害認定として修理をする前に損害額を支払ってもらうことで修理内容を自ら決定できるという状態になります。
もしくは車を買い替える費用の一部にすることもできます。
(※注意※修理をしない場合の支払い金額は基本的には非課税と認識していた方が賢明です)
つまり自分が許容できる範囲で安全上、性能上、法律上問題ない部分に関しては修理をせずに損害額を受け取って過失分に補填することができます。

但し、この方法で特に車を買い替える費用にする場合には問題もあります。
・内部損傷については修理してみないとわからないことがある
車の構造は骨格を外板で覆うように組み立てられており、内部の損傷は分解、計測しないと確認ができない場合が多いからです。特に高級車になると樹脂のカバーできっちり囲まれているので補機類や骨格などの損害を分解前に確認することは難しくなっています。
・支払われた金額よりも修理費用の方が高額となってしまう
上記の分解しなければ確認できない損害が後に発覚した場合に損害認定の際に計上していなかった部分は追加修理となりますので最悪は修理費用の方が上回ってしまう場合があります。
・修理工場によっては難色を示す、もしくは対応してくれない場合がある。
損害認定に必要なことは損害の立証と請求です。完璧な請求をするためには損害を立証する必要があるのですが、手段としては写真撮影を用います。前述の通り分解しなければわからない損害を立証するには実際に分解作業を行う必要があり、損傷診断を行い、加えて見積もりを書く作業もあります。いわゆる手間がかかりますので仮に修理をしないで買い替えとなった場合は手間賃ゼロですからお客様サービスの範疇ということになってしまいます。
修理をする場合でも損傷診断が完璧にできなかったり保険請求に不慣れな修理工場は立証をしきれないために認定額より修理費の方が高額となってしまう可能性を恐れて難色を示す場合があります。下手をすれば赤字になりますからね。
・損傷程度によっては過失分の補填に回す分がない場合もある
これは車によっても損傷形態によっても異なるのでなんとも言えませんが、部品が損傷していて保険会社が取り替え妥当とする部品の中から再使用できるものがなければ成立しません。
・損害額に異議を申し立てられる可能性がある。
これは稀なケースですが相手保険会社の契約者が修理費が高いと言ってくる可能性もゼロではありません。
・過失決定、示談までは保険金は支払われない。
これは正直一番きついかもしれません。修理をした場合、今も修理工場が立て替えてくれる場合が多いですが、最近ディーラーなどでは入金が確認できなければ車を引き渡してくれない場合もあり、修理費を一旦全額建て替えるなんてことも。

これらの問題を解決するにはいくつか方法があります。
・修理工場に車を修理する事を確約する。
修理をする事で工場は利益を得られますし、損傷診断のための分解も修理の為に必要な作業なので無駄になりません。更には見積もり作成も通常必要ですから工場にとって全くの無駄にはなりません。
・車を買い替える場合はアジャスター立会いにて損害認定をしてもらう。
前述の通り修理工場にとって全く利益にならない損害の立証作業を損保のアジャスターが査定する事で解決します。その際工場へは「買い替えるので修理費相当額を保険会社に出してもらって欲しい」と伝えるのがいいでしょう。そうすることで修理工場の手間を減らせます。上記Aさんのケースだと損害確認は相手保険会社が行うので相手保険会社へは「買い替えを検討しているので損害額を算出してほしい」と伝えるのがいいでしょう。
アジャスターは基本的に現状認定できる損害を見積もりとして作成します。内部損傷は明らかに損傷が認められる場合を除き目視できなければ計上できません。
車のフロント周りは高額部品が多く、一つの部品で100,000円以上の差が出ることもあります。コンプレッサーやオルタネータ、ハイブリッド車ならインバータなどの高額部品が損傷している可能性が見積もりに示唆されていたら有料でもいいので分解して確認して欲しいと修理工場へ依頼した方が良いでしょう。また、アジャスターが損害認定をすることで損害額に対して相手方から異議を唱えられたとしても工場や自分自身が説明責任を求められるようなことはなくなります。
・リサイクル部品を検討する
いわゆる中古品です。自動車部品はヤフオクなんかでかなり広いジャンルで出ています。持ち込みすると嫌がる修理工場もあるので、損害認定を受けた後に「中古部品を使って安く仕上げて欲しい」と伝えましょう。修理が完了したら自費で支払いを済ませて保険金は自分に振り込んでもらうのがいいでしょう。
・金額次第で買い替えか修理かを決めたい場合
もっとも多いケースですがこの場合は保険会社への認定額算出を依頼し、認定金額が算出された後に意向を決定しましょう。車の知識が無ければどうしたらいいかわからないと言うのが通常ですので任せるしかありません。
損害額が確定すれば示談も前に進みやすくなるので早急に修理をするか買い替えをするか結論を出して損害額を確定させましょう。

今回の話を簡単にまとめると
①修理しなくてもお金はもらえる。(※時価額を損害額が下回っている場合)
②自己負担を減らすには修理工場と損害保険会社をうまく使う。
③保険に詳しく、良心的かつ善良な車屋さんを選ぶ。
④直すのか直さないのか早く結論を出す。
※全損の場合は時価額の交渉をする←次回お話しします。

ここまで書いてなんですがそもそも車両保険に加入していればこんなに頭を悩ます必要はありませんね。先日身内が車を一台潰しましたが車両保険に加入しておらず買い替えるにしてもお金に苦労しました(新しい車には車両保険を付保しました)。相手保険会社から提示された時価額が適正ではなかったため資料を添えて送付しました。相手も車両保険を付保していないため支払額に直結する過失割合についてはまだ決着がついていません。前述の通り身内の車は全損となったので争点は時価額と過失割合です。全損の場合は時価額が上限なので今回のような修理費から補填というプロセスは踏めないため時価額交渉のみとなります(相手方は修理費補填しているかもしれませんね)。
もう事故から4ヶ月も経ちました。保険金が払われたのは人身障害の方だけで自動車の方は決着つかず。内情がわかる分あまり急かすつもりもないですが経過報告もないしそろそろ電話入れてみようかな。

次回は時価額についてお話ししていきます。

※事故には様々なケースがあります。今回の方法は全ての事案に当てはまらないことをご了承ください。