さて、現状では板金塗装業だけで生計を立てようとすると非常に難しいです。理由としては先日お話しした、先進装置によりぶつかりにくい車が増えたことや、修理をしないまま使用することに抵抗がない人が増えたこともありますがその他にも何点かあります。
一つは下請けとしてディーラーなどから仕事を引き受ける際には、お金をお客様から直接頂く訳ではないので定価より安く仕事を受けなければなりません。業界用語では「〇〇%レス」や、「レス率〇〇」といったように表現しますが〇〇に入るのは数字で、例えば「30%レス」や、「レス率30」ならば、10,000円の仕事をして7,000円しか手元に入らないのです。『元請けに持って行かれる=レスされる』という感覚でしょう。
これって元請けと下請けの関係上、当然の仕組みではあるんですが、自社で一定の仕事量確保できなければ上記のように下請けをして仕事を確保しなければならないですし、そもそも事故なんてそう頻繁に身近で起こらないですからね。
さらに板金塗装においては部品が発生しますよね?取替えが必要な外板部品はボンネットで言えば軽自動車で2〜4万円程度。小型車、普通車で4〜8万円程度。アルミ製の高いものだと10万円を超えるものもあります(カーボンなど特殊なものは桁が違います)。そのうちの何割かは仕入れ差額で利益になるのですが、この部品の儲けは時間を取られずに得ることができるので欠かせません。
しかし元請けが部品を手配するので下請けに利益は発生しません(下請けで部品手配している場合でも全額は利益にならない場合が多いです)。すると作業料金、いわゆる工賃が下請けにとって唯一の利益になるのですが、部品で利益が得られないことに輪をかけて、先ほどお話ししたレス率がとんでもない要求となってきているのです。
20%レスが普通で厳しくて30%レス。30%でも厳しいと思いますが今では40%〜50%なんて言い出すところもあります。
職人の技術はそんなに安いものではないと思うし近年の職人不足にも繋がっていると思います。
が、その反面職人の高齢化と自動車の素材の進化に伴って今までの修理技法のみで車を修理することができなくなってきました。今までの技術や機械で修理をしたのでは表面上綺麗になったようでも鋼板(いわゆるボディ)の組織が壊れてしまったり、超高張力鋼板が使用される部分が多くなり部材が固くて粘り強くなったために新たな機械を導入しないといけなくなりました。
こんな環境で必要なのは仕事を請けるだけの人員、施設と設備投資の資金。今の私にそんなものはございません(笑)
他にも様々な事情はありますが上記の理由だけでも厳しいのがわかりますよね。修理業界を取り巻く環境は非常に厳しくなっているんです。